2012年4月13日金曜日

日本子宮内膜症協会ホームページ



[1] 病院を受診しようと考えている人へ

「どんな症状があれば産婦人科へ行ったほうがいいのか」、という質問には、簡単には答えられません。きっと、100万人の一人ひとりに、その人が産婦人科に向かう「時」というものがあるような気がします。

(1)子宮内膜症の自覚症状

その上で参考にしてほしいデータが、「正しい子宮内膜症の医学と医療コーナー」にある、「自覚症状のグラフ」です。このデータは、医学界の子宮内膜症解説にもよく使われています。なぜかというと、確定診断者(手術で確かに内膜症だと診断された人)が約600人も集まったデータは、このJEMA2001年データ以外、日本にはないからです。

まず、このデータの見方ですが、たとえば1位の月経痛は88%ですね。これは、88%の人が激痛があると言ってるのではありません。月経痛があるかないかと聞かれて、あると答えた人の割合です。そう、確定診断者の中にも、12%は月経痛がないのです(不妊が主問題の内膜症の女性たちの一部だろう)。

もう一つの注意点は、これは、確定診断された女性たちが、長年の内膜症の人生で体感している症状たちではあっても、内膜症の病巣や癒着に直結した症状だけかというと、そうではないということです。『あなたを守る子宮内膜症の本』には詳しく解説していますが、3位のレバ-状の塊が出る、7位の月経量が多い(過多月経)、11位の不正出血などは、子宮腺筋症の特徴です(子宮筋腫の一部にも)。

このことから、内膜症の人のお腹の中に、腺筋症や筋腫が一緒にあることも多いとわかるのです(腺筋症は内膜症の親戚、筋腫はこの2つとは赤の他人)。

以上のことをふまえた上で、自覚症状グラフを参考にして下さい。

(2) 子宮内膜症とは関係ない月経痛

ふつう、月経は痛くありません。トイレやショーツに出血してから、あっ始まった、と気づく人も多いもの。
すると、月経痛があれば、そく病気かというと、そうとも言えないのです。

出産を経験していない人の子宮口は、経験している人と比べると狭くて堅いので、月経血(はがれた子宮内膜と血液)が押し出されるだけで痛む場合があります。また、子宮が後屈している人は(内膜症がなくても後屈する人がいる)、月経血の流れがスムースにいかないので、やはり痛むことが多い。また、何らかの下腹部手術(盲腸、帝王切開など)の経験者のお腹の中には、術後癒着ができていることが多く、子宮と周りの臓器や腹膜(お腹の内側の壁)が癒着していると、子宮がいびつに引っ張られたり、左右に傾いていたりすることも多く、月経血の流れがスムースにいかなくて、やはり痛むことがあります。これらは、内膜症やその他の病気とは関係のない月経痛です。

自分の月経痛が何から来ているのか、自分で判断するのは難しいですが、月経痛そく内膜症と考えてしまうと、いらぬ医療を受けるはめになることも実際に多いので、ちょっとご注意。

(3)子宮内膜症の月経痛や下腹部痛

さて、市販の鎮痛剤を使って、月経の前日、初日、2日目あたりの月経痛(腰痛や頭痛が伴うことも多い)がおさまっているなら、あまり心配しなくていいかもしれません。

しかし、市販の鎮痛剤を使っても仕事や学校に行けない人、使っても寝こむ人、1週間も使ってしまうほど痛みが続く人は、内膜症かどうかは別として、心配です。また、下腹部の手術経験がないのに、月経の出血が終わってから排卵に向かう時期も下腹部痛がある人や、性交痛か排便痛(痔の痛みと区別必要)のどちらかがある人は、内膜症が心配されます。月経のたびに脂汗を流しているとか、転げまわっているなどという人は、もちろん何らかの問題があります。

以上のような人は、信頼できる産婦人科へ行ってみましょう。ただし、これらのような症状が1回あっただけではなく、3~6回以上続くようになってからにしましょう。

(4)診断をするということ

ただし、日本の病院の中には、適当な診断で高い薬を処方し、毎日の収入をあげなければやっていけないところが、産婦人科だけでなく、どの科でも驚くほどたくさんあります。わざとやっている医師と勉強不足でやってしまう医師とその中間タイプの医師がいますが、日本のあらゆる病気の患者が水増しされたり、反対に病気があるのに診断してもらえなかったりするあまたの現実は、日本の大きな不幸です。

そういう観点から考えると、一概には言えませんが、医師が直接経営について考える頻度の低い、公立病院のほうがいいかもしれません。日本では、内膜症かどうか診断するだけでも、2ヵ所、3ヵ所の病院に行ったほうがいいとも言えるでしょう(セカンドオピニオン、サードオピニオン)。

内膜症では、手術による確定診断ではない診断を臨床診断と言いますが、その3割は内膜症ではないだろうと言われています(誤診ということ)。

(5)初診の心得

初診では、鎮痛剤(「JEMA通信32号/2000年12月」に詳細解説)以外のものは避けたほうが心身には安全です(初診ではせいぜい問診・内診・超音波エコー程度だから、内膜症の診断はあまりできないので、内膜症の治療薬を処方するのはおかしい)。鎮痛剤しか処方しなくて不親切だと思った医師が、実はいい医師ということもあるのです(鎮痛剤しか出さない理由を説明すべきだが)。(※JEMA通信:3年9月10年度からの会員制度廃止に伴い、現在は発行しておりません)

内膜症の薬は、どれも副作用が強く、それを半年使ったからといって治るわけでもなく、費用も驚くほど高いものばかりです(『あなたを守る子宮内膜症の本』に詳細解説)。欧米先進諸国では(医療を語る時には、日本は先進国とは考えないほうがいい)、確定診断(手術で確実に内膜症病巣を確認すること)をしないと内膜症の薬は出しません。そうでない段階でとりあえず出すのは、低用量ピルです。

病気は心身を侵害しますが、医療が余計に心身を侵害することが多いということも、肝に銘じておきましょう。

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[2] すでに治療を経験している人へ

子宮内膜症の最大の問題は、ほんとうの子宮内膜症であれば、現時点の医学・医療によるどんな治療をしても、閉経まで二度と再発させることはないぞ、とは言えない世界的現実です。

(1)医療を変えていく

だから、世界各国に、子宮内膜症の当事者による市民組織があるのです。

日本子宮内膜症協会(JEMA)も、世界の協会たちと同じように、全国でお互いをサポートしあいながら(セルフヘルプ)、事務局では、自分たちに必要な医学・医療を推進したり、心身によくない医療の改善を求めたりという、医学界に働きかける活動をしています。個々の会員(※会員:会員制度は03年9月10年度より廃止されました)の中にも、自分の主治医を育てていこうとしている女性たちがたくさんいます。

こういう6年半の活動の結果、内膜症の医学・医療をよく理解している第一線の医師たちは、JEMAとほぼ同じ考えで内膜症医療を進めていますが、それが、なかなか広がりません。なぜかというと、医療も産業ですから、どうしても経済第一で動く部分があるからです。

(2)日本の一般的な診断と治療は世界の非常識

さて、日本の一般的な内膜症治療というと、ほんとうに内膜症かどうか未確定な診断のままで(臨床診断という)、GnRHアゴニスト(スプレキュア、ナサニール、リュープリン、ゾラデックス)か、ダナゾール(ボンゾール他)という、内膜症、筋腫(添付文書では術前の病巣縮小目的だけに限定)、思春期早発症、乳がんや前立腺がん(がん病巣摘出手術後の再発予防期待)、などに保険適用のある強くて高い薬を、4~6ヶ月、連続使用させるのが大半です(閉経状態にする)。

これらの薬を、確定診断もせず処方したり、確定診断であっても繰り返し処方するのは、世界中でも日本だけでしょう(欧米先進国にも途上国にもそういうことはない)。これらの薬の短期的な効果、副作用、可能性のある後遺症などは、『あなたを守る子宮内膜症の本』(以後『守る本』)ほか、JEMAのいろいろな情報に述べています。

(3)1クールでやめたほうがいい

さて、すでに内膜症という診断を受け(確定診断でも臨床診断でも)、手術なしで上記の薬を1クール(4~6ヶ月の連続使用のこと)使った人で、使用後、最初の月経が再開した時から半年~1年以内に症状が再発した人は(再発病巣の検査確認があった人も)、同じ薬や上記の別の薬をもう一度使うような治療は、やめたほうがいいでしょう。

かなりの初期内膜症の人でないかぎり(たいてい10代後半~20歳前後で最初の内膜症細胞発生がある。症状発症はすぐではない)、これらの薬をどう使おうと、内膜症とさよならできる人はいません。これは、科学的事実です。

また、手術なしで上記の薬を使用し、月経再開から1年以上も再発のない人は、おそらく内膜症ではないので、内膜症のことは忘れてください。

(4)再発(再燃)した時の選択の道

では、再発した人はどうすればいいのでしょうか(薬物治療後は再発といわず再燃という。手術でかなり改善させた1~2年後などを再発という)。

選択肢は、大きく4つあるでしょう。


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1つ目は、技術の信頼できる「腹腔鏡手術」を受け、病巣をできるだけ処置し、癒着をできるだけはがし、お腹の中をきれいに洗う方法です。

これで、痛みなどの症状は和らぎ、妊娠可能率も上がります。同時に、確定診断もできるので(内膜症があるというだけでなく、実際のお腹の中の病状程度がわかる)、今後の人生の予測をある程度立てることができるでしょう。また、次の再発までの年月が一番かせげます。もし、技術の信頼できる「開腹手術」のほうが選びやすい環境にいるなら、それでもいいとは思います。

ただし、手術というのは、腹腔鏡でも開腹でも、医師によって信じられないほどの技術の幅があります(美容院やレストランの格差どころではない)。技術の低い医師の手術は、臓器や大血管の損傷のような大事故までいかなくても、ひどい術後癒着を発生させたり、神経系(全身に網の目のようにある)をひどく障害させたりするので、不妊になったり、生涯続く可能性のある下腹部痛を負ってしまうこともあります。

2つ目は、鎮痛剤だけでは少しずつ内膜症は進んでいくので、現状をこれ以上悪化させないために、「低用量ピル」で安定させる方法です(このしくみは順じ解説していく)。

また、低用量ピルを使えば、子宮体がん・卵巣がん・他の良性卵巣腫瘍などが起こるリスクが明らかに減り、PMS(月経前1週間くらいの心身の様々な不快症状)や貧血などもまもなく改善されます。

不思議だと思うかもしれませんが、4週間ごとの女性ホルモン分泌の大波小波の繰り返しを静かに平らにするだけで(妊娠初期のような状態にするので、GnRHアゴニストの閉経状態とは全然違う心身に良い状態)、多くのことが可能になるのです。

ただし、禁忌(使用してはいけない人)はいくつかあるので、医学知識の信頼できる医師と相談しましょう(筋腫を禁忌にしているのは世界で日本だけだから、筋腫は重要なことではない)。

全国のほぼどの医師も扱うはずですが、世界中で30年前からふつうの医療ではあっても、日本の医師は低用量ピルの知識がほとんどないので、患者側が積極的になる必要があるでしょう。

3つ目は、ダナゾールの低用量治療や局所治療、GnRHアゴニストの低用量治療やアドバック(下げすぎたエストロゲンをエストロゲン製剤で足してやる追加治療)などです。

これらは、強すぎる薬たちの危険度をできるだけ低くしようという工夫ですが、医師が患者と共に、実際に治療しながら検証を積み重ねている段階です。GnRHアゴニスやダナゾールをどうしてももう一度使いたい場合は、ふつうの強い使い方ではなく、ぜひ、こういう使い方を希望しましょう。

4つ目は、生活療法や民間療法などを使って、西洋医学のいかなるホルモン剤(GnRHアゴニスト、ダナゾール他、低用量ピル、中用量ピルなど)も使わない方法です。

ただし、ほんとうの内膜症の女性が、こういう方法によって内膜症の病巣や癒着を悪化させなかったという医学的に根拠のある報告は(エビデンス)、世界でいまだにありません。ですから、先の3つと並列で書くのは間違っているのですが、こういう方法を推奨する人々もいます。

JEMAや専門医は、これらは基本的に症状緩和で使うアイテムであり、これだけで過ごすリスクは大きく(内膜症の病巣と癒着は進む)、先の3つの方法と併用する程度が妥当だと考えています。

(5)あなたを守るのは、あなた

漢方薬や鍼灸などという東洋医学は、いずれの方法と一緒に使っても大丈夫ですし、症状緩和と心身全体の体質改善が期待できます。東洋医学は、4つ目の生活療法や民間療法とは比べ物にならないほど確立された正当の医学ですが、西洋医学なしでは内膜症の病状程度の把握はできず、病巣と癒着の発達を止める力もありません。西洋医学の医師と同じように、信頼できる漢方医(漢方相談をしている薬局でもいい)や鍼灸師を探し、上手に利用するのがいいでしょう。

また、生活の衣食住を心身にやさしいものに変えていくことや、一番身近な人間関係を自分にとって心地よいものに変えていくことも、実は大切なことです(『守る本』に深く解説)。

あなたの心身を守ることができるのは、医師でもなく、親でもなく、夫でもなく、もちろんJEMAでもなく、あなたなのです。

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[3] CA-125という血液検査の意義

CA-125という血液検査は、基本的には、あてにならないモノと考えておきましょう。

(1) CA-125の意義

これは、卵巣がんを調べる腫瘍マーカーですが、内膜症でも高く出ることがわかり、内膜症の簡易検査として導入されました。しかし、その後、卵巣がんでも内膜症でも、数値に相当なバラツキが出ることがわかり、実際の病巣が何もなくても高く出る場合もあるなど、信頼性の低い血液検査だとわかりました。

その結果、これで卵巣がんや内膜症があるかないかと語るのは良くないとなりました。

その後は、この腫瘍マーカーの使い方は、内膜症の人に何らかの治療をするときに、治療前、治療中、治療後などに計り、治療効果を診るという使い方に変わりました。なお、欧米ではあまり利用しないようです。

「あなたは"35"以上だから内膜症です」なんて、この数値を一番に重視して臨床診断してしまう医師は、Dr.梅と考えていいでしょう(『守る本』では医師を松竹梅に分けて説明している)。

(2)検査時期による個人内変動

もう一つの難点は、この腫瘍マーカーは、月経周期の中でかなり変動するということです。月経期には、ふつうの人でも100や1000を超えることもあるそうです。

このことから、血液検査をする時期も、よく考えねばならないことがわかります。つまり、毎回、月経周期(あるいは治療周期)の決まった時期に計らないと、自分一人の変化であっても、悪くなったとか良くなったとかさえ言えないのです。

たとえば、月経周期の10日目頃(排卵にかからないように)とか、排卵の1週間ほど後(高温期の安定期)とか、あえて月経期などというように、計りやすい一定した時期を考える必要があります。ただし、ここまで気をつける医師は少ないので、自分で受診時期を考えるとか、医師に注意を促すということですね。

なお、CA-19-9も、似たようなものです。ただし、大学病院や総合病院の中の、内膜症の臨床研究をしている施設では、あえてこれらの腫瘍マーカーを計り、それらの価値に関する研究発表などを考えているところもありますので、頻繁に計る場合は質問してみましょう。

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[4] 内膜症治療の基本と、低用量ピルと内膜症治療薬の矛盾

「低用量ピルなんて、子宮内膜症の治療薬にはならない」と言う医師が、ほんとうに多いと思います。

(1) 患部の変化か、患者の心身の状態改善か

彼らは、日本の医師である以上しょうがないと言えるA群(Dr.松・竹)と、医師とは呼びたくない怠け者で、薬価の高い薬を出す癖のついているB群(Dr.梅)に分かれます。

A群の医師は、内膜症だけでなく、あらゆる女性疾患や生殖に関するプロなので、内膜症に関わる医学をきちんと把握しています。ところが、患者を診断・治療するという医療の意味を、先輩医師たちの日々の仕事の中でしか学んでこなかったという、大きな矛盾を抱えているのです。「医学」は十分知っていても、「良い医療」を学ぶ機会があまりなかった人も結構いるわけです。

だから、GnRHアゴニストを半年使用後、たとえばチョコレート嚢胞が半分程度に縮小したという事実を、とても素晴らしいと感じてしまう(先輩たちも患部ばかり診ていたから)。いっぽう、低用量ピルを半年使っても、チョコのサイズ半減はGnRHアゴニストほどではないことが多く、治療効果が弱いと判断してしまう。

しかし、実際には、両者の症状改善効果は同程度であり、使用中の副作用や使用後に残る後遺症の可能性は、GnRHアゴニストが飛びぬけて問題ありです。

内膜症の女性の心身の状態がどんな副作用を伴いながらどう改善されたかとか、閉経までの10年20年30年をできるだけ少ないリスクでどう管理するのかなどより、その時の卵巣サイズの減少やその時の痛みの緩和、ひどい場合はその時のCA-125の数値減少だけに気を取られる医師があまりにも多いことは、私たちにとってたいへん不幸なことです。もちろん、大きな卵巣や成長の早い卵巣は処置すべきですが、それは薬ではなく、手術です。

(2)内膜症は内科疾患ではなく、外科疾患

ここで、根本的なことを書いておきましょう。

内膜症の病巣は、実はmm規模のモノがパラパラッとあるだけで、大きくても1~3cm程度です。卵巣チョコレート嚢胞はもっと大きくなりますが、その原因病巣はやはりmm規模にすぎず、大きくなっているのは血液が溜まった袋です(この袋全体が病巣というわけではなく、そのごくごく一部だけ)。

それなのに、これらmm規模の病巣を完全に消滅させる薬が、まだこの世に存在しません。今あるどんな薬を使っても、使用中、病巣はある程度は潜んでしまうようですが、薬が終わればググッと息をふきかえします(これは再発とは言わず再燃と言う)。


テストステロンのレベルを後押しする方法

それで、現時点において一番効果のましな治療は、そのmm規模の病巣たちを、手術で焼いたり取ったりする保存手術となります。

ならば、優秀な医師が確実に病巣たちを処置すれば二度と再発しないと思いたいですが、実は、まだ目に見える大きさに育っていない病巣があったり、新たに発生したりするので、保存手術をしても、1~5年後などに再発する場合があるのです(再発の早さは医師の技術と病巣の状態の掛け算による)。また、レベルの低い医師の手術では、術後の最初の月経から変わらず痛いとか、今までより痛い期間が延びるなどの被害が起こることもあります。

それでも、内膜症は、内科的治療(薬物治療)だけでは半年から1年程度の一時的な改善しか期待できませんし、そういう薬物治療を半年以上休んだとしても再度繰り返すのは心身の負担が大きいため、欧米先進諸国では、外科的治療(手術治療)が先行します。

もし、手術せずに取りあえず何か薬を使うとしたら、低用量ピルだけです。低用量ピルは、内膜症の治療薬と言われるものとは格段に違い、安価で、マイルドで、リスクが少ない安心な薬です。

ただし、内膜症の治療薬も低用量ピルも、軽症から重症までのすべての内膜症に一定の効果があるわけではなく、通用しない内膜症の人も当然いますし、それぞれ禁忌はあります。とにかく、内膜症は内科的疾患ではなく、外科的疾患だということを忘れないでください。

(3)GnRHアゴニストの副作用は強い

GnRHアゴニストと低用量ピルの副作用は、驚くほど違います。

GnRHアゴニスト(スプレキュア、ナサニール、リュープリン、ゾラデックス)ではまだ死んでないと言われますが、うつが深刻に発生し、手首をカットしてしまうという話はたまにあります。そこまでいかなくても、不安が強い、家を出られない、寝食がきちんとできないなどの強いうつ状態の人も結構います。これも立派な副作用で、低エストロゲン症状が際立った場合です(2~3ヶ月の使用でも後遺症として残る人もいる)。

低エストロゲン症状は、別名、更年期様症状(様がついてる点に注意)と言いますが、うつ状態以外にも、もう何でもありというほど様々な副作用が多発します。そのせいで、仕事どころか日常生活すらできないという人はかなり多いです(厳密には実際の更年期症状とは違う)。これで治るわけでもなんでもないのに、月経は止まっても、副作用で日常生活ができないなんて、本末転倒!!

実は、製薬企業は、自分たちが製造・販売している薬の現実はよく知っているので、半年以上の継続使用はダメと添付文書に書いています(ただし98年99年というつい最近のこと)。

(4)GnRHアゴニストは半年しか使えないキツイ薬

両者の比較を、半年ではなく、1年、2年、3年などでやってみたら、GnRHアゴニストと低用量ピルの地位は一気に逆転します。

GnRHアゴニストを通常量で1年も2年も3年も連続使用したら(あまりにつらくて実際には不可能だろう)、心身は壊れてしまうでしょう。具体的には、全身の骨や血液・血管という根本的なものがどんどん老化してしまいます。

骨量は一気に減少し、20代や30代でも、50代や60代以上の状態に変化し、使用を止めても戻りません(半年使用でも戻らない人がいる)。そういう人が50代になった頃には、もう骨粗しょう症に片足をつっこんでいるかもしれません。また、脂質代謝が悪化して動脈硬化が進行したり、心機能まで怪しくなることもあるでしょう。計算力や記憶力なども低下しますし、筋肉や関節の柔軟性が低下したり、全身の強い疲労感も常にあるようになるでしょう。これは半年使用の副作用からの類推ですから、実際はもっとひどいかもしれません(人での通常量での半年以上の長期使用実験は倫理的にないはず。ちまたで実際の治療として行われているなら犯罪的)。

GnRHアゴニストやダナゾールを通常量で半年以上連続使用するのは、心身に悪いだけなので拒否しましょう。なお、各薬剤の添付文書は、『守る本』や『子宮内膜症の事実』(以後『事実』)やJEMA通信付録などで出しているので、必ず読んで下さい。(※JEMA通信:3年9月10年度からの会員制度廃止に伴い、現在は発行しておりません)

(5)低用量ピルは長期に使えるマイルドな薬

しかし、低用量ピルなら、1年や2年や3年などは大した年月ではありません。なぜなら、この世で一番マイルドなホルモン剤だからです。喫煙せず、高血圧のない女性なら(詳細な禁忌は32号通信を参照)、10代半ばから40代まで、望まぬ妊娠を避けるために使っていい薬のため、薬としての問題は最小限に抑えられているのです。
低用量ピルというのは、健康な女性が避妊のために何年も使い続けていいとされている、この世で唯一の薬です。そのため、病気の治療薬とは違って、副作用などの基準がとっても厳しくなっています。正反対のモノとして、抗がん剤を考えるとわかりやすいです。がんは、人間の死亡率第一位の悪性疾患ですから、がん死亡を減らすために、正常細胞を傷つける副作用も多少は許されていますよね(嘔吐・脱毛、白血球減少などの血液異常など)。

(6) 使用後4~5ヶ月の効果というエビデンス

内膜症は、現時点の科学では、閉経までつきあう病気であり、どんな薬を使っても、病巣を消滅させることはできません(ただし、今の20代が閉経するまで医学がこのままのはずはないですよ)。

GnRHアゴニストで縮小しても、それはごく一時的なことで、まもなくリバウンドします。半年もせっせと投資したのに、喜んだのもつかの間、株価が100分の1ほどに下落し、大損したようなものでしょうか。

GnRHアゴニストもダナゾールも、使用中の4~6ヶ月と(劇薬が多いのでこれが使用限度)、その後4~5ヶ月の効果しか認められないのに(96~98年にそういう結論・エビデンスが世界的に出た)、副作用は多くの人(50~90%)に強く出て、後遺症が残る人までいる薬であることを、絶対に覚えておいて下さい。

これらの薬をどうしても2回目に使う場合は、低用量にしたり、局所剤にしたり、アドバックをして使うなどを、必ず当たり前にするべきでしょう。

(7)低用量ピルを処方させよう

みなさん、医師が手術とは関係なく、低用量ピルを否定してGnRHアゴニストを勧めたときに、こう言ってみましょうか。

「先生、これを半年使えば、私は閉経まで安定するのですか? 私は、閉経まであと○十年ありますが」
もっと言えそうな人は、こんなのはどうでしょうか。

「先生は、紹介可能な腹腔鏡の上手な医師をご存知ですか? ご存知ないなら、私が自分で探しますから、その間、低用量ピルで安定させるという方法が一番ましではないでしょうか。低用量ピルの服用前に必要な検査をお願いします。先生が私を内膜症と診断したのですから、検査は内膜症患者の私には保険でいけますよね」
あるいは、「私は当分結婚する予定がないので、その何年かは、低用量ピルで安定させるのがいいでしょ。避妊もできますしね。(検査については上記参照)」

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[5]低用量ピルを処方する医師リスト

低用量ピルは、たいていの産婦人科には置いてありますが、処方について、医師の考え方には相当な開きがあります。

まず、厚生省が中心になってまとめたガイドラインのとおり、筋腫のある人には処方しないと決めている医師がかなり多い。まあ、自己防衛ですね(筋腫の禁忌は世界で日本だけで、科学的根拠は何もない)。

また、検査をやたらいろいろやって、副収入を当てこもうという医師も多いですし、混合診療は違反だからと、ピル代が自費なのにあわせて、検査代や診察代も自費請求する医師が多いでしょう。

また、内膜症の女性には低用量ピルは効かない、GnRHアゴニストやダナゾール、あるいは中用量ピルでないと効くはずがないと思い込んでいる勉強不足の医師も、まだまだ多いです。

さて、これでは、内膜症の女性が低用量ピルに辿り着くのに、眠れる森の美女を助けにいく王子様よりたいへん!

そこで、役に立つかもしれない医師リストをご紹介しましょう。

32号通信にも書いた「オーキッドクラブ」という、低用量ピルや女性の健康に前向きな医師の団体が、そのHPで、全国数百人の会員医師リストを掲載しています(総合病院は少なく、大学病院はないみたいで、ほとんどが開業医のよう)。

とりあえずリストの近所の医師に電話してみて、内膜症だけど出すかとか、筋腫があるけど出すかとか確かめ、反応がいいようだったら利用してみましょう。

ただし、このリストの医師について、JEMAが言うところの内膜症の松竹梅は分かりません。だから、基本的には、自分の心身は自分で管理するという「セルフマネージメント」の考え方に立ち、彼らのことは、低用量ピルを出させる医師という役割で活用するという姿勢がいいのではないでしょうか。つきあううちに松や竹とわかったら、総合的な主治医にしてもいいですよね。

オーキッドクラブ  FAX 03-3814-6645

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何IA小児科の看護師

[6] 内膜症の薬物治療の基本(女性ホルモンの働き)

内膜症になったみなさんに絶対に理解してほしい基本中の基本事項が、「月経周期によるからだの変化」を簡潔にまとめた図で、『守る本』ではP90の図5、『事実』ではP10の図3です(『守る本』のほうが進化させているからベスト。このHP内「正しい医学と医療」にも載っています)。これがあまりわからない人は、内膜症という病気はあまりわからず、治療薬の価値程度はもっとわからないと断言できますから、以下をよく読んでください。

(1) オンナの基礎知識:第1条「女性の心身は毎月何をしているのか」

月経周期の心身の変化の図のなかで、とくに、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という二つの女性ホルモンの分泌曲線は、何も見ずにフリーハンドで書けるようになってほしいくらいです。また、排卵という現象をしっかりイメージすることも重要です(3センチの卵巣にプラス2センチの卵胞が盛り上がり、ポンと破れてドビャーっと飛び出す)。

これは、女性の体内で、初潮から閉経までの約40年間にわたって、ほぼ4週間ごとにひたすら繰り返されているものすごい変化です。男性の心身には周期的な変化など何もないから、女性より下等な存在とも言えますね。
ところで、月経というのは、女性の4週間ごとの心身のいろいろな大変化のなかで、上記の女性ホルモン分泌や排卵とは違って、ただひとつ目に見える形で起こる現象ですが、どうも多くの人が正しく理解していないようです(無理もない。学校や社会の教育がないか、あっても非常に物足りないのだから)。

月経とは、脳の視床下部(専務さん)がGnRH(アゴニストがついてないのに注意)という命令ホルモンを分泌し、その命令を受けた脳の下垂体(部長さん)がFSHとLHという命令ホルモンを分泌し、その命令を受けた卵巣(課長さん)がエストロゲンとプロゲステロンを分泌し、その命令を受けた子宮(係長さん)が妊娠準備という自分の毎月の仕事をした結果です(エストロゲンとプロゲステロンは子宮以外にも全身で働き、女性の健康を保っている)。

子宮は卵巣の命令どおりに動く臓器で、妊娠に備えて子宮内膜(子宮の一番内側を覆っている赤ちゃんのベッドなどと言われる膜)を分厚く栄養たっぷりにしておき、妊娠した場合は280日も胎児を育てる部屋となり、妊娠しなかった場合は来月の妊娠準備のために今月の子宮内膜をきっちりはがして掃除しておこうと、月経を起こします。

月経の時に出血するのは、子宮内膜をはがしやすくする方法に過ぎません。月経とは妊娠しなかった4週間の結果であり、その主目的は子宮内膜をはがすことで、出血は手段なのです。ところが、その血液は立派な当たり前の鮮血が出て行くので、女性は貧血になりやすいわけです(古い不要な汚い血液だと錯覚している人が多い)。
女性は毎月月経を繰り返しているという表現は、全体の一部しか現していません。女性は、二つの女性ホルモンの分泌大変化と、排卵と月経と、その他もろもろの、「月経周期の心身の大変化」を毎月繰り返しているのです。

(2) 現代女性は超レアモノ人類

ところが、これを40年間もひたすら繰り返している女性は、なんと、私たち現代女性だけなのです。

人類が始まったのは1億~2億年ほど前でしたっけ、それからずーぅぅっと長い期間にわたって、つい70年くらい前までは、女性は5人や10人も子どもを産み、閉経後の寿命はもっと短かったですね。しかし、たった一握りの存在である現代女性は、有史以来の星の数ほどもいた女性たちと比べて、初潮年齢が下がり(閉経年齢はさほど変わらない)、出産数が激減し、月経周期というダイナミックな4週間ごとの心身の大変化を、100~200回以上も(もっと多い計算もある)たくさん経験することになってしまいました。さらに、閉経後の寿命もかなり長くなっています。

そのために、星の数ほどもいた女性たちの中で、思いもよらないリスクを背負う超~~~少数派になってしまったのです。子宮体がん、卵巣がん、乳がん、内膜症、腺筋症、筋腫、良性卵巣嚢腫、PMSなどは、明らかに、排卵・月経回数と女性ホルモン分泌大変化の回数が激増したために、増えてしまった疾患や問題です(もちろん、がんも良性疾患も複合的な要因で発生・発達するが、排卵・月経回数はかなり大きな要素である)。

(3) 内膜症の薬物治療の根本

だから、内膜症の薬物治療の基本的な考え方は、エストロゲンとプロゲステロンの「ダイナミックな分泌大変化をなくすこと」と、「排卵を止めること」の2つになります。月経は、その結果として止まるだけのことですから、完全に止まらなくても(点状出血)、女性ホルモン分泌大変化と排卵がなくなればいいのです。

ただし、この考え方は、80年代以降の内膜症の分子生物学的発見がたくさん増えるまで、出てこなかった考え方です。それまでは、エストロゲンを抑えればいいだろうと、しごく単純に考えられていました。

(4)内膜症の薬物治療がひん曲がった

最初に、西洋医学として内膜症治療に利用されたのが、避妊薬である高・中用量ピルや黄体ホルモンでした。しかし、どれも副作用が多く(吐き気・頭痛、不正出血など)、医師たちがどうしようと悩んでいたところ、1960年代中ごろに登場したのが、副作用を激減させた低用量ピルでした(その後もずっと副作用を減らす改良が続いた)。この低用量ピル登場は、世界中の子宮内膜症治療の歴史ではこの時期なのですが、ご存知のように日本だけ世界でただ一国、30年も遅れて、1999年9月でしたね。

世界では、低用量ピルの登場後、内膜症の治療薬として声高々に初めて登場したのが、ダナゾール(83年)です。そして、スプレキュア(88年)、リュープリン(94年)、ナサニール(95年)、ゾラデックス(2000年)と続きました(年度はすべて日本での発売時期で、海外のほうが全部先行販売している)。

ところが、これらの治療薬たちは、エストロゲンを抑えればいいという古い考え方の元で、60年代から開発が始まったものばかりで、80年代以降の新しい発見による新しい考え方とは関係なく、そのまま80年代以降に連続登場しました。さらに、医師が処方するなかで、大きな本末転倒まで起こってしまうことに!!! 

治療のついでに月経が止まるだけのことなのに、患者に分かりやすく説明するために誰が言い始めたのか、「月経を止めましょう」という言葉が一人歩きし始め、それが内膜症の第一の治療目的であるかのように大きくゆがんでいったのです。その結果、スッキリと月経出血を止める薬が、多少の不正出血のある薬よりも、重宝されるようになっていきました。また、どの薬もピルよりはるかに薬価が高くて儲かるという事実も、医師たちを麻痺させていった要因の一つでしょうね(出産数は減少するばかりでお産の利益が激減)。

(5)中用量ピルの価値

中用量ピルは、1960年代以降の低用量ピルの登場によって、世界中で30年前から、日本では99年9月以降、内膜症には利用価値はあまりありません(避妊では当然使わない)。

それでも、日本では、中用量ピルには月経困難症などの保険適応があるので、2~3割負担で使えるという意味で、低用量ピルの費用も捻出できない内膜症の女性に、副作用は強いのを覚悟で使うことはあるでしょう(そういう説明が医師からないとおかしいが)。

中用量ピルも低用量ピルも同じ作用なのに、副作用は相当に違います(GnRHアゴニストやダナゾールよりはましだろう)。まあ、中用量ピルというのは、白黒テレビやダイヤル電話のようなものですね。いえ、副作用が強すぎるというのはテレビや電話にはないことですから、この例えもよくはありません。

要するに、中用量ピルは30年以上前の副作用の強い旧製品なのに、日本では、99年9月以降も、中用量ピルのほうが内膜症に効くという発言をする医師がいるのは、世界のふつうの医師から見ればどう映るのでしょうね。

(6)基本に戻ろう(病院経営協力はもうしない!!)

いいですか、内膜症の薬物治療の目的は、月経を止めることではありません。『守る本』図5や『事実』図3にあるような、「ものすごい"女性ホルモンの分泌大変化そのもの"をなくすこと」と、「排卵を止めること」なのです。

現在、その方法は大きく2種類あって、地球上に登場した順番で言うと、低用量ピルによるウソの妊娠初期状態(ナンチャッテ妊娠)と、ダナゾールやGnRHアゴニストによる仮の閉経状態(ドップリ閉経)です。この2種類では、使っている間の効果は同程度ですが、使える期間は相当に違い、副作用は仮の閉経のほうがはるかに強く、費用も驚くほど高価なことは、前に書きました。

内膜症は、現代の医学・医療レベルでは閉経まで完治させることは難しい病気ですから、手術治療や薬物治療をどう選ぶかということは、今の目先の効果ではなく、50歳までの内膜症とともに歩く人生と、50歳から80代までのふつうの女性としての閉経後の長い人生の、全部を見通して、リスクの少ない治療方法とそれを提供できる医師を上手に選ぶ必要がある慢性疾患なのです。

あくまでも、自分の「内膜症なりの健康」を維持することが、もっとも必要な視点です。ただ、そういう視点で診療してくれる産婦人科医のほうが少ないことが、日本の内膜症の女性の不幸の原点の一つでしょう。

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[7] 排卵・月経の目的は、妊娠すること

(1)オンナの基礎知識:第2条「排卵と月経の目的」

そうは思いたくはなかったけど、JEMAでは、2000年あたりから、やっぱりそうなんだなあと認識を新たにしていることがあります。

女性のからだが、初潮から閉経までの約40年間にわたって、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)のダイナミックな分泌大変化を繰り返し、排卵と月経を繰り返しているのはなぜなのか?

みなさん、これ、やっぱり、妊娠し、出産するためなんですよ。うまくいけば、毎年子どもを産み続けるという、「種の保存」なんですね。女性の心身のいろいろな営みが、そのために動いていると理解できます。いくら現代女性だからといっても、私たちはまぎれもなく、「ヒト種のメス」なのです。

さらに、女性ホルモン(とくにエストロゲン)が、女性の健康維持にとても重要な役割をもっていること(骨、血液・血管、皮膚、脳など)、男性は40代から生活習慣病(成人病の新しい表現)がどんどん増えていきますが、女性の場合は閉経するまではさほどでもないという画期的なしくみも、出産後の子育てに支障がないように、健康でいるためなんだと考えるようになっています。

(2)祖母と母の逆転

子どもを5人も10人も産んだ身近な女性を知っていますか? 

私の祖母は現在96歳で、3年ほど前からようやく(変な言い方)寝たきりになりましたが、当時、片方の手足が動かなくなったのに(脳の反対側の一部が血栓などで血流不全になったのかな)、3ヶ月ほどで自然に持ち直し(家庭看護のみ)、動かなかった方の手足がふつうに動くようになり、白髪の生え際まで少し黒くなり、肌のつやも持ち直し、ベッドにはいますが意外と元気なんです。寝たきりになったことで活動性が激減したため、ボケは始まりましたが、柔らかめの食事はできるし、生活に必要な会話もできます。おそらく、循環器、消化器、泌尿器など、基本的な機能は正常で、体内には一粒のがんもないのでしょう。祖母は8人産んでいます。そして、完全母乳育児。

ところが、その長女である私の母は、4年前に、70歳で、子宮体がんで亡くなっています。母は、死産が1人、出産が2人、中絶が1人です。母乳は私だけで、弟はミルクでした。母は、40代からかなりの肥満になり、さらに筋腫分娩(粘膜下筋腫が膣まで出てきた状態)のために、40代から50代後半までずうっと極度の過多月経で、かなりの慢性貧血でした(心臓肥大、高血圧、足の関節炎なども併発)。57歳で腟からの筋腫摘出手術を受けた後、やっと自然閉経しました(ここで子宮摘出すればよかったと悔やまれるが、体がん診断などなかった)。そして、69歳で子宮体がん(1期C)がわかって手術した時には、5センチほどのがん病巣と、1センチほどの筋層内筋腫が2個ありましたが、内膜症や腺筋症はありませんでした(� �出直後の子宮・卵巣・大網・リンパ節などを見た)。がんの筋層内浸潤は3分の1以下で、リンパ節転移も全くなかったのに、腹膜や胸膜転移のためか、術後1年で亡くなりました。

母の葬儀の時、祖母は92歳でもボケなどなく、92歳なりの立居振舞の健康な姿で自立して出席し、先立つ娘に大泣きしていました。この逆転は何でしょう。

明治生まれと大正末生まれでは、衣食住の環境が大きく違いますから、たまたま起こったあるケースというだけかもしれませんが、みなさんも、周りの女性を見直してみてください。なお、現在45歳である私は1人出産しましたが、母乳は4ヶ月ほどでダメになり、ミルクでした(出産後約3ヶ月で月経再開)。

(3)多産(プラス母乳育児)と少産

当たり前に多産(プラス母乳育児)を経験した時代の女性たちは、少産の女性たちと比べて何が違うのか。もちろん、衣食住の生活環境も大きく違いますが、まさに、閉経までに経験する排卵・月経の回数が、あまりに違う。

祖母は、20歳過ぎから産み始め、母乳もずっと出しましたから、まともな月経はあまりなかったそうです。しかし、94歳までふつうに活動できる骨と筋肉、しっかりした脳と内臓、そして美しい肌をもっていました(60代で一緒にお風呂に入ったときに、つやのある肌に驚いた)。妊娠中は十分なエストロゲンとプロゲステロンが分泌されますから、月経周期があまりなくても、彼女の健康はそれで間に合っていたのでしょう。

なお、骨や血液・血管などの健康を維持するために必要な女性ホルモン量は、排卵・月経に必要な量ほど大量には必要ありません。

現在、多産という人生を選択する余地は、私たちにはほとんどありません。だからこそ、内膜症など関係なくても、多くの女性に低用量ピルを使ってほしいのです。低用量ピルは、ウソの妊娠初期状態を作ることで、排卵を止め、女性ホルモン分泌大変化を平らにします。

低用量ピル以外、排卵・月経を上手に止める手段は、地球上にはありません。低用量ピルで1年、2年、3年、5年… と排卵・月経を止めることは、子宮体がん、卵巣がん、内膜症、腺筋症、筋腫、良性卵巣嚢腫などの、予防対策になります。現在すでに40代であっても、それらの予防効果はあります。

また、月経痛や排卵痛、月経困難症、過多月経、それによる貧血、月経不順、そして内膜症や腺筋症の安定治療に有効なことは、言うまでもありません。

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[8] 低用量ピルの実際

(1) オンナの基礎知識:第3条「月経は前周期のドラマの結果」

女性のからだが4週間ごとに繰り返しているのは、「排卵」と「女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)のダイナミックな分泌大変化」であり、「月経」はこの一連の流れの結末でしたね。

「月経周期のからだの変化」の図を見てください(「正しい医学と医療コーナー」に載っている図です)。脳がFSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌して卵巣に命令し、卵巣で卵胞が育ち始め、その卵胞がエストロゲンを分泌し始めるのが、月経2日目あたりからだとわかりますね。今周期のドラマが始まりました。
では、その時に同時に起こっている月経ってナニモノ? 

これは、その前周期の排卵とホルモン分泌大変化による結果なのです。つまり、この図の左端にある月経は、もっと左側にあるはずの前周期の結果、前周期のドラマの最後なのです。このことを、必ず覚えてください。

(2)低用量ピルを始めた時のこと

低用量ピルは、月経初日から使うと言われていますが、それは、そのほぼ2週間後に起こるであろう排卵を、必ず止めたいからです。避妊薬ですからね。この使い方を守れば、排卵は止まり、避妊できます。

しかし、その時の月経は止まりませんよ。このカラクリ、もう分かりましたね。そうです、その月経は、前周期のドラマの最後でしたね。前周期にしっかり出来上がった1センチ近くもある「通常月経周期の子宮内膜」が、妊娠せずに不要になったから、出血とともにはがれ落ちたのです。ピルを飲み始めたのに変だわ、なんて思わないように。

ところが、初日から低用量ピルを飲み始めていますから、エストロゲンとプロゲステロンが毎日一定量で外から入ってくるわけで、心身は不思議な状態になっていきます。月経は出ているのに、妊娠したような状態。これが、脳がうまくだまされていってくれる過程です。

ただ、子宮も少々混乱するので、ふつうの月経とは違った様子になりがちです。おそらく、いつもより長く少量出血がダラダラ続く人が多いでしょう(反対にいつもより少ない出血で終わってしまう人もいるかもしれない)。こういう不思議な状態は、基本的には、低用量ピルを飲み始める最初の月経だけに起こることです。

1パック(21錠)を飲み終わった後の休薬期間(7日間。なお、偽薬を7日間飲む28錠タイプもある)の消退出血(月経とは言わない)は、21日間のピル服用によって、薄く弱く発達した「ピル周期の子宮内膜」なので、はがれ落ちてきても、かなり少ない出血になってくれます。それ以降、低用量ピルを4週間ごとに続けている間は(3週間服用1週間休薬か、偽薬を含めて4週間服用)、「ピル周期の子宮内膜」しかできません。

また、消退出血の期間も結構痛いという内膜症の人は、7日間の休薬期間をおかず、21錠の実薬だけを繰り返し使い続けるという連続使用でも構いません。ただしその場合は、6~10パックほどに1回は消退出血を出したほうがいいでしょう。

(3)低用量ピルが内膜症の女性にしてくれること

ピル使用による恩恵は、月経後から排卵に向かうあたりの下腹部痛が改善し、PMS(月経前1週間くらいの心身のさまざまな不快症状)がなくなり、消退出血では月経痛も月経量も激減します。他にも、何かと心身が軽くなっていくのを感じるでしょう。

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